【箸休めコラム】何も知らない自称オタク【N.E.U.T.R.A.L】

お笑いコンビ「かまいたち」の「トトロ」のネタをご存知だろうか。

 

常に視聴率が取れるアニメ、宮崎駿・スタジオジブリの『となりのトトロ』――マニア向け作品でないにもかかわらず、それを人生で一回も見たことが無い、

そのことがいかにスゴいか、という自慢(?)をテーマに、マルチエンディングならぬ「マルチ『オチ』」を採用した漫才だ。

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ところで本誌では、著者の誰もが広く深い分野において自他ともに認める「マニア」「オタク」、あるいは「ギーク」なのは、彼らの文章をご一読いただければ自明だと思う。

 

そんな猛者たちの中にいる私もオタクを自認しているのだが、具体的に「何の?」と問われるとイマイチ自信を持って明言ができない。

というのも、私は皆の「一般常識」をほとんど知らないからだ。

 

例えば上記のトトロはおろか、『ガンダム』も『エヴァ』もまともに見たことが無いし、いまや世界の『ポケモン』さえリアルタイムに興じたことが無い。

だが実はこの「見たことも接したこともない」という点は、強力なアドバンテージにもなり得る。

 

なぜならそれは、冒頭のかまいたち風に換言すれば、私が「時間という壁に守られている」ゆえに、既に「見てしまった」人たちは決して私の「状態」には追いつけないからである。

 

そして付け加えれば、私にだけ今後「見るor見ない」の選択権が与えられているわけだ――

 

さて戯れ言は程々に、そんな私が少年期の80~90年代に、前述のトトロなどのド定番の代わりに夢中になっていたモノの一部をご紹介しよう。

 

それは、時に「小室ミュージック」や「ヴィジュアル系バンド」であったり、または「PHS」の「メル友」、はたまたカリスマ美容師ブームに端を発して「ヘアアレンジ」や「メイクアップ」、他には……

 

……もうこれ以上挙げるまでも無いので、ハッキリ言おう。

当時私は「誰も知らないことを知りたい」とか「人と違う変わったことをしたい」と、思春期特有の思いを強く抱きながらも、

結果として単にそのときの流行を追いかけ、飽きては捨てを繰り返していたに過ぎなかったわけである。

 

ここでふと、本誌執筆陣の眩しいほどの文章が頭をよぎる。そうだ、何かを語る、とはかくあるべきだ。

それに引き替え私は、失ったおカネや時間に比べて、あんなにも「好きだったこと」から大した知見を得られていないどころか、

全く別のセカイに今からでも繰り出そうとするヤル気や勇気ももはや無い。

 

つまりあえて私を例えるなら、風俗やAVだけやけに詳しい素人童貞のようなものであり、

あるいは理由や信念もなく頑なに高齢処女を突き通している程度に過ぎないのだ。
(この精神性はある意味、ステレオタイプなオタク「的」側面であるかもしれないが。)

 

おそらくこれからも私は、日常をやんわり世間に流されつつ、何となく興味を漂流させながら、「何者にも成れず」ひっそりと時を過ごしていくことであろう。

そう、所詮多くのヒトはそんなモノ。そうやって私は――ここ――で、自慢にもならぬ自慢を抱え、今も何も知らぬまま「オタク」と称している。(了)

 

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季刊 N.E.U.T.R.A.L より

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